東海
東海地方の経済及び産業の概要と展望
日本の最先端を走る技術の集積地
東海地方の経済規模・特徴
東海地方(愛知県、岐阜県、三重県、静岡県の4県)は、総人口1,500万人で全国の11.8%を占めています。また、総面積は7.8%、地域内総生産は61兆8,620億円と日本の総生産額の12.4%を占めています。
東海地方 経済指標の全国シェア(単位:%)
中部経済産業局「東海経済のポイント2013」(東海三県比較:愛知・岐阜・三重)
を参考に作成。
当地方の特長は、日本4大工業地帯の中で最大の生産額を誇る中京工業地帯(愛知、岐阜、三重)を有している点です。さらに静岡県も製造品等出荷額で全国第4位の実績をあげており、合わせると、全国で約23%ものシェアを誇ります。また、産業構造で高い比率を占めているのが、第2次産業(工業、製造業など)、第3次産業(電気、ガス、水道や金融、サービス業など)です。特に第2次産業は34%と、全国で最も高い比率を占めているところからも、第2次産業が東海地方の経済を牽引していることがわかります。
一方、環境面に目を向けると、東京圏と大阪圏の中間に位置する地域であり、陸海空路すべての交通手段が十全に整えられております。そのため、日本国内の交流はもちろんのこと、アジアを中心に世界各国との貿易も活発に行われています。また、当地方は両圏の公示地価よりも4割以下の価格と、比較的割安に土地を購入できる地域であることから、製造業を中心に当地方へ工場等や事業所等を建設する企業が多い点も強みとなっています。
日本トップクラスの技術者が集う工業地帯
愛知県豊田市のトヨタ自動車株式会社をはじめとする自動車産業と、川崎重工業、三菱重工業など航空・宇宙産業の二大輸送機器産業を筆頭に、東海地方全体にその関連企業、取引先の有力な生産拠点が存在しています。愛知県では工作機械、鉄鋼、プラスチック、ゴム製品といった産業の全国に対するシェアや製造品出荷額で、1977年から34年間連続して全国1位を誇っています。それ以外に、三重県四日市市臨海部の石油コンビナート、津市の造船部品、電機部品、製菓。そして岐阜県岐阜市のアパレル・繊維や関市の刃物類が中京工業地域の有力な産業です。
加えて静岡県の浜松市では、二輪自動車の内燃機関や楽器類、繊維製品、光電子技術産業が盛んで、近年では、産学官連携の積極的な展開をし、次世代自動車や光電子技術関連産業の高度な技術関連の集積が進みつつあります。また富士市の製紙、化学、電機等も有力な産業となっています。
このように、東海地方は世界トップクラスの技術力を誇る、日本のものづくり産業を支えてきた企業が集約しているところが特徴としてあげられる地域です。
自動車産業を中心とした東海地方 代表的企業とその立地
(参照:名古屋港基本計画検討委員会 資料)
製造品出荷額等の都道府県別比較(2011年 経済産業省「工業統計」より作成)
※上図は全国10位までの都道府県を示す。岐阜県は、全国第19位である。
日本の航空・宇宙産業を牽引する東海地方
東海地方は日本の航空機・部品生産額の約5割、航空機体部品では約7割を生産する、日本隋一の航空宇宙産業の拠点です。地域内には大手機体メーカー(三菱重工業株式会社、川崎重工業株式会社、富士重工業株式会社など)の他、素材業者といわれ機体の軽量化や燃費向上を図るために欠かせない炭素繊維複合材料の製造・研究開発を行う企業(東レ株式会社など)、部品や工作機械を供給する企業など、多くの企業が集積しています。
一方、現在の航空宇宙産業クラスターは海外の完成機メーカーがピラミッドの頂点を占めており、東海地方の企業は1次下請けや2次下請けといった位置関係になっております。今後、ピラミッドの頂点となる完成機製造技術を獲得し、航空宇宙産業の世界的な拠点となるべく、岐阜県・名古屋市はじめ12地方公共団体の共同指定申請により、2011年12月22日、「アジアNo.1航空宇宙産業クラスター形成特区」が国際戦略総合特別区域として指定されました。現在は区域拡大指定を受け、13市町14地区が、アメリカ合衆国ワシントン州北西部にあるシアトル地区やフランスの南西部に位置するツールーズ地区と肩を並べる航空宇宙産業クラスターとなるべく、活動に取り組んでおります。
最先端の技術と豊かな自然が共存する東海地方
自動車産業や鉄鋼業など、第2次産業の印象が強い東海地方ですが、第1次産業(農林漁業)も盛んに行われています。代表として、愛知県で生産されるキャベツ、シソは全国1位の産出額を誇っており、観葉植物も全国1位の産出額を誇っています。
また、岐阜県は森林率81.5%と、全国平均の67%を多く上回る森林を有するなど、日本を代表する林業地帯の一つです。国内合板メーカー最大手のセイホク株式会社と地元の森林組合が岐阜県中津川市に建設した「森の合板工場」と呼ばれる合板工場は国内初の山間部・内陸型工場として、関係者から多くの注目を集めました。当工場ではスギ・ヒノキ・カラマツといった原木を用い、国産材100%の構造用合板を製造するなど、県内林業の発展に寄与しています。
土地の多くが太平洋に面している静岡県は、焼津漁港を中心に、漁業生産量が北海道、長崎県に次ぐ3位、水産加工生産量が北海道に次ぐ2位と日本でも有数の漁業地帯です。県全体の漁獲量としては、まぐろ類、かつお類が日本一のシェアを誇るなど、寿司などに代表される日本の食文化にとって、無くてはならない地域となっています。
三重県は南北に熊野灘地区、鳥羽・志摩地区、伊勢湾と1,088㎞に及ぶ長い海岸線を有しており、まぐろやかつお等の魚類、海藻類、貝類、えび類等の様々な種類の海産物を収穫できる点が特長です。中でも真珠や伊勢海老は、特産品や贈答品としてブランド化されるなど、国際的にも高い知名度を誇っています。
(静岡県公式HP「静岡県の水産業について」、みえぎょれんHP参照)
静岡県・三重県の魚種別漁獲量(2011年「漁業・養殖業生産統計」より作成)(単位:t)
東海地方の雇用情勢について
高い賃金水準と有効求人倍率を誇る
東海地方の労働事情
厚生労働省が発表した2013年度の「就業地別の求人数を用いた有効求人倍率」によると、全国平均の0.96倍に対し、愛知県1.34倍、岐阜県1.19倍、三重県1.23倍、静岡県0.96倍と、いずれも全国平均以上の値を示していることがわかります。完全失業率も、全国平均4.0%に対して、東海地方は3.3%と、良好な値を示しています。
有効求人倍率の推移(全国・東海) 完全失業率の推移(全国・東海)
参照:厚生労働省「労働力調査」
平均勤続就業期間、入職率、離職率も、全国平均値より良い値を示しており、全国的にも良好な労働環境のもと、自分に合った仕事や企業と巡り合い、主体的にキャリアを築くことができる機会が整っているといえます。
参照:矢野恒太記念会編「データでみる県勢(2014年)」
また、都道府県別・年齢別平均年収をみると、東海地方のうち2県が上位10位以内に入っており、比較的良い雇用条件下にあるといえます。
参照:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」
東海地方の魅力について
歴史・文化のロマンあふれる東海地方
戦国時代には愛知県を中心に、織田信長・豊臣秀吉・徳川家康など、多くの武将を輩出しました。その名残は各地に残っており、名古屋城・犬山城・岡崎城・清州城などの歴史上、有意義な建造物が今もそのたたずまいを残しています。また、世界文化遺産に登録されている白川郷は日本の原風景ともいえる合掌造りの集落を、飛騨高山では情緒あふれる古い街並みを、第62回式年遷宮を2013年(平成25年)に迎えた伊勢神宮では日本古来から守られてきた厳かな雰囲気を今に伝えています。
白川郷・合掌造り
参照:白川郷観光協会HP
飛騨高山の古い街並み
参照:高山市HP
歴史・文化を伝える雄大な自然環境に目を向けると、日本を象徴する国内最高峰の山である富士山の存在があげられます。2013年6月29日、日本人の山岳信仰や、葛飾北斎らの浮世絵の題材にもなった文化的意義が認められ、ユネスコの世界文化遺産に登録されました。近年では「山ガール」と呼ばれる女性の増加など、登山場所としても人気が高まっています。
参照:富士吉田観光HP
個性豊かなご当地グルメ、食文化
手羽先唐揚げ・味噌煮込みうどん・富士宮やきそばなど、個性豊かな食文化が発達しているのも東海地方の特徴です。特に、喫茶店文化は東海地方を代表する文化となっており、「モーニングサービス」という豪華な朝食のサービスから一日が始まり、憩いのひと時から、商談の場まで、一日中喫茶店が利用されています。東海地方の食文化にとって、なくてはならない存在と言っても過言ではないほど、喫茶店は生活の一部として利用されています。
参照:名古屋観光情報HP(左は手羽先、右は小倉トースト)
アクセスのよい、観光・レクリエーション・温泉地
日帰りで気軽に遊べる、レジャー・保養地が地区内各地にあり、高速道路、鉄道、海路などの交通手段も充実しているなど、プライベートを過ごしやすい環境が整っている点も東海地方の魅力です。ハイキングコース・キャンプ場・海水浴場といった自然とふれあうことのできる施設や、遊園地・水族館・動植物園などのデート・レジャースポット、例えばマリンスポーツで有名な御前崎市などの観光地が、車で2時間の範囲内に集中しているなど、休日にしっかりと息抜きできる環境が整っています。
参照:御前崎市HP「マリンパーク御前崎」
また、温泉地が多いのも東海地方の魅力です。代表的なところでは、国際的に有名な温泉地である岐阜県下呂市、愛知県蒲郡市にある4つの温泉地、遊園地・アウトレットモールとセットになり一大レジャー施設を形成している三重県桑名市の長島温泉など、日ごろの疲れを癒すことができる環境もしっかりと整っています。
参照:一般社団法人下呂温泉観光協会HP
リニア中央新幹線が繋ぐ大都市経済圏 東海地方の大きなチャンス
2011年5月、東海旅客鉄道(JR東海)を中心にリニア中央新幹線建設計画が公表されました。東京‐名古屋間は2027年、名古屋-大阪間は2045年の開通を目標に工事が進められています。国土交通省の試算によると、東京-名古屋間は最速40分で結ばれるとされています。つまり東海地方は名古屋を中心にGDP世界一の都市・東京との交通網強化による大きな経済効果を、大阪圏より18年も早く得る優位を持っています。
この優位を活かす為に、名古屋市は「世界に冠たるスーパーターミナル・ナゴヤ」を目標とする都市計画をまとめ、「国際的な役割を担う拠点として、名古屋駅・都心部の利便性と安全性を高め、多彩な魅力のあるまちづくりを官民一体で進める。」といった方針を打ち出しました。今後、東京圏と東海圏は、これまで以上に、経済面や観光面などの、結びつきが強くなると期待されます。
参照:名古屋市「名古屋駅周辺まちづくり構想(案)」(平成26年6月作成)より
最後に
東海地方は便利な交通網が整備されており、働きやすさと遊びやすさ、歴史・文化的な情緒や豊かな山河と海の恵みを享受できるなど、充実したビジネス環境と心豊かな暮らしを実現できる点が魅力です。優れたビジネス環境とプライベート環境が並存する、「ハイブリッド」な生活環境が整った東海地方で、充実した生活をおくってみませんか。