九州の経済及び産業の概要と展望
高付加価値で世界へ挑む九州の主要産業
九州の経済規模
九州は、総人口1,325万人(平成25年)で全国比10.3%、面積でも同比11.2%を占め、関東、近畿東海の3大都市圏に次ぐ規模があります。
また、上記人口、面積に加え、域内総生産や小売業年間販売額、地方自治体財政規模などの主要経済指標が全国の1割前後を占めていることから、「1割経済」とも言われています。
九州地域の特徴
九州は、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島の7県で構成され、海峡を隔てているためか、他の地域に比べて東京経済圏からの独立度が高く、域内での相互依存度が高いのが特徴です。
九州の産業構造で高い比率を占めているのが、第1次産業(農業、漁業など)と第3次産業(電気、ガス、水道や金融、サービス業など)です。中でも、九州各地に拠点を構える半導体関連(全国シェア31.2%)や、北部九州を中心とした自動車産業(同13.9%)がリーディング産業に挙げられます。自動車産業においては、世界を見据えた先進的な生産拠点を構え、九州のみで150万台以上の生産能力を誇ります。
また近年では、新たなエネルギー供給源として注目を集める、太陽電池の大規模工場の立地が進み、「ソーラーアイランド」として認知されるようになりました。
且つ、北九州市や水俣市などは環境モデル都市として選出され、環境関連やリサイクル関連企業が集積しています。循環型社会の構築を目指し、技術やノウハウの蓄積を軸に、様々な事業が推進されています。
また、九州のブロードバンド(ADSLや光回線を使ったインターネットなど)の世帯普及率は90.1%と高く、豊富な人材を強みに、全国コールセンターの拠点化及び集積化が進み、コールセンター拠点集積地ベスト10に九州の4県がランクイン(3位:福岡県など)するなど、高い伸びを示しています。(参照:全国自治体のコールセンター誘致・進出状況調査)
さらに、九州各地を結ぶ高速交通網の充実により、豊かな自然や国内の源泉数の37%を占める豊富な温泉、各地に点在する大型テーマパークなどの魅力あふれる観光資源を生かした観光業・レジャー関連も需要・従業者数ともに増加傾向にあります。
アジアへのゲートウェイとして、高まる経済交流
国内都市と同距離圏内のアジア
九州は、東アジアの中心に位置し、気候、風土、立地面から見ても、グローバル化の流れにおけるビジネス展開としては最適な環境にあります。九州経済の中心でもある福岡市は、東京~福岡間が1,000kmであるのに対し、韓国の釜山まで約200km、ソウルまで約600km、中国の上海まで約1,000kmと、国内では最も東アジアの主要都市に近い距離に位置しています。また、九州・山口各県の空港からは、アジアの主要都市を中心に34の国際路線が張り巡らされており、九州・山口の港湾には135航路の外貿コンテナ定期船が就航するなど、交易・交流環境が充実しています。
(出典:福岡市HP)
全国1位の港と、進む国際化
さらに、民間企業を中心に、アジアと日本との新たな物流結節点として博多港や北九州港を活用する動きが相次いでおり、福岡の博多港は、外国航路の乗降人員が年間84万人(2012年)で全国1位を誇ります。これに伴い、主に韓国、中国を中心としたアジアからの観光客の受け入れや国際コンテナ取扱量の増加など、域内の国際化が進んでいます。
平成24年の九州企業の海外進出件数を国別にみると7割以上がアジアへの進出となっています。平成14年に比べてASEANが急増する一方、中国は、これまでに多くの企業が進出し既に足がかりを有しているため、新たな進出企業の割合は減少しています。
また、九州と黄海沿岸の韓国・中国地域は環黄海経済圏と称されおり、距離の近さや長い交流の歴史等を背景とする経済的な結びつきの強さが特長です。特に九州の経済活動に占めるアジアの割合は高く、2013年の九州の輸出総額に占めるアジアの比率は59.0%と高く推移し、2012年の九州への入国外国人数でも、アジア地域が93.7%と大半を占めています。中でも、2013年の貿易額を10年前と比較すると、対中国(貿易額2.1兆円)は2.6倍、対韓国(貿易額1.1兆円)は2.0倍に拡大しています。
このように、近年、成長著しいASEANを含め、アジアとの貿易の伸びに期待が高まっており、九州は、アジア圏と日本とを結ぶゲートウェイ(玄関)としての性格を強めつつあります。
九州の雇用情勢について
雇用特区採択で新たな雇用創出へ期待が高まる
九州の中心地、福岡市
九州各県の人口構成をみると、いわゆる生産年齢(15~64歳)の人口比は、福岡県が最も高く(63.1%)、他の県は全国比率(62.8%)を下回っています。県内総生産も福岡県が全体の約4割を占めます。
また、昨年5月、福岡市の人口は150万人を突破し、ビジネスの拠点として、更に魅力を高めています。加えて、都市機能が揃い、またアジアとの距離の近さや国際会議の誘致率の高さ、留学生の多さなどの国際性も、起業する上で魅力的な環境として認知される理由といえます。
このような地域特性に着目し、政府は、国際競争力のある拠点をつくり経済活性化を図る目的で、国家戦略特区の一つである「創業のための雇用改革拠点特区」として同市を指定し、ベンチャー企業の人材確保の支援など、「今後10年間で50万人」の雇用創出を目標に掲げています。
雇用機会の増加
九州の有効求人倍率は、前年12月から徐々に改善が見られ、2014年2月期は、0.84倍まで改善しました。新規求人倍率は1.28倍と9期連続で1.00を上回り、完全失業率は3.9%、完全失業者数は25万人と3期ぶりに30万人を下回るなど、雇用環境は改善がみられます。
九州は、アジアの成長を取り込もうという戦略のもと、企業の海外生産比率、販売比率などの高まりを背景に、より一層の雇用機会創出が期待できるエリアです。外国人観光客の消費・購買行動に加え、九州において魅力ある市場が増えれば雇用の増加が予想されるため、九州経済は進展の流れの中にあると考えられます。
(参照:経済産業省九州経済産業局 『九州経済の現状 2014年 冬版』)