近畿
近畿の経済及び産業の概要と展望
近畿の経済規模
全国の約2割を占める巨大経済圏
近畿2府4県(大阪府、京都府、滋賀県、奈良県、兵庫県、和歌山県)の総人口は、2,096万人で全国比16.3%(平成26年1月1日時点)。福井県を加えた2府5県でみると、総人口は2,177万人で全国比17.0%。総面積では、全国の8.3%を占めています。
域内総生産(2府5県)は80.8兆円で、国内シェアは16.2%。さらに、その他の統計を併せて見ると、近畿は対全国比で概ね2割弱の経済規模を有することが分かります。
域内府県別の経済規模を比較すると、大阪・京都・兵庫の3府県の占める割合が、総人口で78.7%、域内総生産で79.4%となり、京阪神地域に人口・経済が集中していることが分かります。
近畿の産業構造の特徴
第3次産業へのシフトが進む
近畿地域内総生産(名目)の産業別構成比を紐解いてみると、近畿においては、下図のように第3次産業が総生産の3/4を占める産業構造になっています。また、時系列の変化では、「製造業」「建設業」の比率が低下し、「不動産業」「情報通信業」「サービス業」の比率が上昇しています。下図の円グラフのように、特定の業種に偏ることなくバランスがとれているため、Uターン、Iターンで就職する際にも、選択肢が多い
また、産業構造を従業者数で見た場合、就業構造は「製造業」「卸・小売業」「医療・福祉」のウエイトがやや高くなっています。
近畿の製造品出荷額は、1985年以降ほぼ横ばい状態となっており、全国に占めるシェアは18%前後で推移しています。製造品の特徴としては、全国比で「鉄鋼」「金属」「化学」「電気機械」のウエイトが高く、主要製品別では「繊維」「電池関連」などのシェアが高くなっています。
都道府県別の主要産業製造品出荷額を見ると、大阪・兵庫・和歌山は「基礎素材型産業」、滋賀・京都・奈良は「加工組立型産業」の割合が高くなっています。
近畿地域の足元の経済は、生産、個人消費、設備投資、雇用などの主要項目において着実に持ち直しており、今後もこうした基調が続くものと期待されています。
近畿の雇用情勢について
近畿の雇用状況
雇用情勢は回復基調
近畿(2府4県)の労働力人口は1,300万人で、全国の16.2%を占めています。
足元の雇用情勢は、労働需給改善の動きが強まっています。有効求人倍率は、平成26年2月に約6年ぶりに1倍台を回復し、同年5月時点で1.02倍まで上昇してきました。近畿で有効求人倍率が最も高い大阪府は、平成25年10月から8ヶ月連続で1倍台での推移となり、平成26年5月時点で1.10倍まで上昇しました。また、完全失業率も、就業者数の増加などから前年を下回る推移が続いており、平成26年1-3月期の近畿の完全失業率は4.3%(前年同期比-0.7ポイント)となっています。
域内府県別平均年収は下図のとおりで、4府県で全国平均473万円を上回る値となっています。
近畿経済産業局の「地域経済産業調査」(平成26年1-3月期)によると、業況が改善してきている「自動車」「住宅」「非鉄金属」等で社員・パートなどが増員され、部門間で過不足を調整する動きが続き、一部で人出不足の声が聞かれたとの指摘があります。また、景気回復に伴い、新規採用を増加させる動きが活発化し、有資格者や即戦力となる技術者を中途採用する動きもみられるとともに、海外事業展開については、引き続きグローバル人材が求められています。近畿圏の国際化が進んでいることとあわせて、グローバルに活躍したい学生にとっては、魅力的なエリアとなっています。
大阪府の雇用状況
成長分野は「医療・福祉」
大阪府の労働力人口(平成26年1月-3月)は439万人で、前年同期に比べて2千人増加し、完全失業率は4.9%で、前年同期に比べて0.5ポイント低下しました。
大阪府の主要産業別の新規求人数は、「建設業」「製造業」で2ケタ以上の高い増加率が続いています。また、「医療・福祉」は55ヶ月連続で増加を続けており、主要産業の中で最長となっています。
近畿の魅力について
近畿地方の概要
高度な都市機能と豊かな自然を併せ持つ近畿地方
近畿は、北は日本海、南は太平洋に面し、大阪平野を中心にほぼ同心円状に盆地や山地が連続して広がる地形で、国内最大の湖水である琵琶湖を有するなど、豊かな自然が広がっています。都市部においては、都市機能・交通・産業が高度に集積しており、これを取り巻く域内各地には、固有の歴史や文化に裏打ちされた貴重な地域資源を持つ地方都市や農山漁村が存在し、圏域を支えています。
歴史と文化が息づく近畿
日本有数の歴史・文化の集積地区
近畿は、奈良や京都等に都が置かれた歴史的変遷から、国宝や重要文化財のうち約半数を有するなど、我が国を代表する歴史・文化資産が集中する地域です。多様性と厚みのある歴史と文化の蓄積は、伝統工芸や生活様式、祭事、食文化、街並み、景観等にも活かされ、現代の人々の生活に深く息づいています。
国内最多の国宝建造物数を誇る奈良
京都とともに歴史・文化集積圏の中心をなす奈良県の国宝建造物数は、日本最多を誇ります。平城京が置かれていた奈良時代には、シルクロードの終着点として国際色豊かな文化が開花し、宮内庁所轄の正倉院には数々の西洋的輸入品のほか、天平時代を中心とした多数の美術工芸品が収蔵されています。朱雀門をシンボルとする平城宮跡、大仏で有名な東大寺、阿修羅像や四天王像の興福寺、世界最古の木造建築物であり聖徳太子ゆかりの法隆寺、法相宗の大本山である薬師寺、奈良公園内の春日大社など、世界遺産に登録された施設も数多く存在します。
社会資本の充実と高い国際競争力
国際都市として発展
近畿は、個性豊かな各都市が互いに競争や連携を通じて、産業、学術、情報、中枢機能や国際交流などの諸機能における集積が進み、国際競争力の高い圏域を形成しています。さらに、東海道・山陽新幹線、名神高速道路、北陸・中国・山陽自動車道、本州四国連絡道路等の圏域内外を結ぶ高速交通網、24時間運用が可能な関西国際空港、国際競争力強化を図り一体的な運用を目指す阪神港など、日本経済の発展に資する社会資本を有しています。そして、これらの充実した社会資本の活用と、魅力ある国際ビジネスや文化交流の機能集積を進めることにより、国際コンベンションの開催や、海外からの観光客や外資系企業の誘致など、様々な取り組みが進められています。
基盤技術産業の集積
東大阪を中心として基盤技術の集積が進む
近畿には、次世代を先導する産業に加え、ナノテクノロジーや難加工性金属加工等の独自技術を持つ企業が数多く存在します。中でも、国内有数の産業集積地のひとつである東大阪市には、打ち上げに成功した小型人工衛星「まいど1号」等に象徴される、いわゆるオンリーワン企業や独創的技術を有する中小企業が数多く立地するなど、多様で層の厚いものづくりの基盤技術産業が集積しています。
独創的かつ先端的な学術研究
知の拠点化による次世代産業の創出
近畿には、京都大学や大阪大学をはじめとする国内有数の大学が数多く存在し、高度な知識や技術を持つ優秀な人材を多数輩出しているとともに、以下のような特色のある研究開発拠点が形成され、産学官連携等による独創的かつ先端的な学術研究が行われています。
関西文化学術研究都市
京都・大阪・奈良の3府県にまたがる京阪奈丘陵において、大学や各種研究機関をはじめとする多彩な施設が集積し、活発な研究活動が行われています。現在では立地施設数が100を超え、産学官連携による多くの成果も生まれ、 我が国の文化学術研究の進展に大きく貢献しています。
播磨科学公園都市
世界的な科学技術拠点の集積、スーパーコンピュータ「京」との連携、関西イノベーション国際戦略総合特区への指定など、高いポテンシャルを活かし、先端技術・地域技術を活用したものづくり産業の集積を図っています。
彩都(国際文化公園都市)
北大阪の丘陵地に設けられ、文化学術・研究開発・国際交流等の機能を組み込んだユニークな都市づくりが進められています。シンボルゾーンである彩都ライフサイエンスパーク(LSP)には、医薬基盤研究所や各社の研究開発施設などが続々と建設され、LSPを含む西部地区の施設導入エリアが関西イノベーション国際戦略総合特区の中核エリアの一つに指定されるなど、研究開発のさらなる加速が期待されています。
神戸医療産業都市
神戸市のポートアイランドにおいて先端医療技術の国際的な研究開発拠点を設け、産学官連携による医療関連産業や医療関係学術機関の集積を図り、ライフサイエンス分野の拠点群(クラスター)として整備が進められています。
さらに、世界を牽引する次世代産業を産み出す「知の拠点」を関西全体で構築すべく、近畿各地のクラスター間の協働や連携を図りながら、バイオ・ライフサイエンス、環境・エネルギー、次世代ものづくり、コンテンツ分野等の育成や支援に重点的な取り組みが進められています。
本州最南端の地である和歌山
地の利を活かした魅力や産業が根づくまち
近畿は、本州最南端の地である和歌山県を有します。和歌山には、高野山や和歌山城をはじめとする歴史的建造物、熊野古道、白浜や勝浦などの温泉地や魅力的な観光スポットが豊富で、年間を通して多くの観光客が訪れています。また、自然豊かな山間部や周囲を海に囲まれた環境を活かし、農業や漁業が盛んに行われています。農産物では有田みかんや南高梅などがその名をよく知られるところで、漁業では大学の水産研究所が設けられるなど、養殖技術の研究が進み、クロマグロやクエなどにおいて成果をあげています。
和歌山県では、雇用促進にも積極的に取り組んでおり、和歌山県商工観光労働部労働政策課が「UIターン就職支援サイト」を設けるなど、地元企業の紹介やイベントの実施、就職支援や窓口相談などのサポートを充実させています。
広域観光や国家戦略特区の経済効果に対する期待
観光都市ランキング世界1位に選ばれた京都
観光都市世界1位としての京都
世界で最も影響力がある米国旅行雑誌の一つとされる米国の「Travel+Leisure」(トラベル・アンド・レジャー)誌が発表した読者投票による2014年の世界の観光都市の人気ランキング(ワールド・ベスト・アワード2014)で、京都が1位に選ばれました。
2013年に京都市を訪れた観光客数は過去最高の5,162万人となり、外国人宿泊客数も113万人と、初めて100万人を突破して過去最高を記録。
今回の観光都市世界1位獲得により、和食や伝統文化など、京都の魅力に対する国内外における評価がさらに高まり、各地の優れた観光資源と有機的に結び付くことで相乗的経済効果を生み出すことが期待されます。
写真:京都市HPより
集客力を増す「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)」
レジャー産業を牽引するUSJ
大阪市にある人気テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」では、ハリウッドの大ヒット映画「ハリー・ポッター」をテーマにした新エリアがオープンし、連日大行列ができる人気ぶりとなっています。
運営会社は、数年以内にも新たな大型アトラクションを設ける方針のようで、2013年の入場者数1,050万人に対し、今後5年程度で入場者数が1,500万人に達するという見通しも示されています。
周辺ホテルや旅行・交通業界をはじめとするレジャー産業への波及効果など、近畿圏経済への好循環が期待されます。
国家戦略特別区域の指定
イノベーション創出の起点へ
経済社会の構造改革を重点的に推進することによって、産業の国際競争力を強化するとともに、国際的な経済活動の拠点形成を促す観点から、規制改革等の施策が総合的かつ集中的に推進される国家戦略特別区域。この国家戦略特区に、関西圏(大阪府・京都府・兵庫県)および兵庫県養父市が指定されました。
関西圏では、①健康・医療分野における国際的イノベーション拠点の形成を通じ、再生医療を始めとする先端的な医薬品・医療機器等の研究開発・事業化を推進すること、②チャレンジングな人材の集まるビジネス環境を整えた国際都市を形成することが、目標に盛り込まれました。これにより、これまで推進されてきた近畿各地のクラスターにおける取り組みが加速し、高度医療の提供に資する医療機関、研究機関、メーカー等の集積や連携強化が図られることや、都市再生、まちづくり、教育改革などの進展が期待されます。
特区では、世界で一番ビジネスがしやすい環境を創出することや、雇用制度の面からも柔軟で多様な働き方を可能にするなどの改革が進められる見込みです。こうした施策が導入されることにより、グローバル企業や新規企業の人材活用が促進され、雇用の拡大が図られる期待があります。
また、兵庫県養父市の区域指定では、高齢化の進展や耕作放棄地の増大等の課題を抱える中山間地域において、高齢者を積極的に活用するとともに民間事業者との連携による農業の構造改革を進めることによって、耕作放棄地の再生、農産物・食品の高付加価値化等の革新的農業を実践し、輸出も可能となる新たな農業のモデルを構築することが、目標に掲げられました。
最後に
近畿地方は、首都圏に次ぐ経済規模を持ち、国内のみならず海外展開を目指すグローバル圏としての発展も期待できます。歴史や文化を身近に感じながら、世界を見据えた仕事もできる地域として、Uターン、Iターン希望者にとっても魅力的なエリアといえるでしょう。