北陸の経済及び産業の概要と展望
豊かな自然を生かした第1次産業と、伝統と先進が混在する第2次産業
北陸地方の特徴
日本アルプスと日本海に挟まれた北陸地方。富山県、石川県、福井県の3県からなり、立山・黒部アルペンルート、兼六園、東尋坊などの観光名所に加え、多くの温泉地を有しています。
北陸3県の総人口は303万人で全国人口の2.4%を占め(2014年4月)、日本全国に占める北陸の総面積は3.3%、域内総生産は11.9兆円で2.4%(2012年度)となっています。
後に詳細に触れますが、2011年に法政大学が実施した都道府県幸福度ランキングでは、福井、富山、石川の3県がトップ3を独占する結果になりました。労働を含めた生活環境において、多くの住民が満足して生活できる環境であることがわかります。
北陸地域の産業の特徴
産業別構成比では、第1次産業が1%、第2次産業が27%、第3次産業が71%と、全国平均に比べて、第2次産業の割合が高く、第3次産業の割合が低くなっています。
図表1:北陸の経済規模
(出典:平成26年3月 北陸産業競争力協議会資料)
北陸の農業は稲作が盛んで、農業産出額に占める米の割合が65%を超えています。北陸では漁業も盛んで、沿岸から急に深くなる独特の地形により暖流系から冷水系まで水揚げされる魚介の種類は大変豊富です。漁業生産額の割合は全国の4.5%を占めており、「氷見の寒ブリ」や「富山湾のホタルイカ」「越前ガニ」などは全国的にも有名です。
図表2:ホタルイカ
(写真:とやま観光ナビHPより)
北陸の製造業については、古くからある繊維産業の他、電気・電子工業、機械工業から医薬品、化学まで幅広い企業が進出しているとともに、固有技術を生かしたニッチトップ企業も多数存在しています。
国内有数のグループ企業や外資系企業が数多く存在するとともに、北陸に本社/本店がある上場企業も69社に上り(2013年4月現在)、日本海側随一の工業圏となっています。
Uターン、Iターンで就職する際に、魅力的な企業に就職する機会が多い地域と言えるでしょう。
図表3:製造品出荷額等の構成
(出典:平成24年経済センサス-活動調査)
ライフサイエンス分野と高機能新素材分野に注力
北陸3県と経済界が主体となって構成された「北陸産業競争力協議会」の方針によると、以下の3つの考え方で北陸地域の産業を強化していく予定です。
①北陸地域の連携を深める
北陸3県のリソースを持ち寄り、成長分野を始め、北陸地域で協調した取り組みを進めることにより、対策の相乗効果を生む。
②強みや成長シーズを国と地方で連携して大きく育てイノベーションを起こす
成長シーズを国と地方で連携して大きく育て、地方発のイノベーションを起こしていく。北陸地方共通の成長分野として、「ライフサイエンス分野」「高機能新素材(炭素繊維材料、マグネシウム・チタン等の軽金属材料、ナノ材料)分野」がある。
③産業発展の環境整備を進める(国土と人・企業の強靭化)
少子高齢化やグローバル化といった環境変化を見据えつつ、地域資源を活かした製品開発・海外発信や人材育成・確保、円滑な事業継承など幅広い視点から対策を講じる。
環日本海のゲートウェイとしての北陸
北陸の位置に着目すると、本州のほぼ真ん中、三大都市圏の中央に位置していることが分かります。
高速道路網は、首都圏、中京圏、関西圏と直結され、新たな道路も建設中で、利便性はますます向上します。
鉄道網は、2014年度末に北陸新幹線の開通が予定されており、東京~北陸間が2時間台で移動できるようになります。
北陸3県の3つの港からは中国、韓国、ロシアへの定期コンテナ便も多数あり、富山空港、小松空港からも国内空港や海外空港(中国、韓国、台湾)への定期便が就航しています。これらの陸上、海上、航空輸送網を活かし、環日本海のゲートウェイとしての重要性がますます高まっていきます。
北陸の雇用情勢について
元気な北陸の雇用情勢
北陸の求人倍率
厚生労働省が発表した2013年度の「就業地別の求人数を用いた有効求人倍率」によると、北陸3県の求人倍率がいずれも上位に位置していることがわかります。
図表4:就業地別有効求人倍率
(出典:厚生労働省)
これは、2014年度末に北陸新幹線が開通することを見込んで、アウトレットモールが新設されるほか、流通・サービス業の雇用が活発になっているためです。
下図に示す年度毎の推移を見ても、北陸の求人倍率が全国平均よりも高いことが分かります。これは、高齢化により後発薬市場などが拡大しているためで、地場の製薬業も雇用を増やしています。
図表5:年度別有効求人倍率
(出典:厚生労働省)
北陸の魅力について
幸福度の高い北陸の県
都道府県別幸福度データより
法政大学が2011年に都道府県別の住民の幸福度調査を実施しました。
生活、労働、安全、医療の部門に分け、合計40の指標で評価した結果、下表のとおり1位:福井県、2位:富山県、3位:石川県と北陸の3県が上位を独占する結果となりました。
評価は、4部門40の指標ごとの評点の平均値を計算し、ランキングされています。
① 生活・家族部門:出生率、未婚率、転入率など9指標
② 労働・企業部門:離職率、労働時間、有業率など10指標
③ 安全・安心部門:刑法犯認知数、公害苦情件数、交通事故件数など12指標
④ 医療・健康部門:休養時間、趣味娯楽時間、医療費、病床数など9指標
図表6:都道府県別幸福度調査結果
(出典:法政大学HP)
この調査の結果から、北陸3県ではワーク・ライフ・バランスの取れた豊かな生活が送れていることがわかります。Uターン、Iターン希望者にとって、北陸3県は住みやすさの上でも魅力的な地域となっています。
持ち家の状況
また、図表7、図表8に示す通り、持ち家率と1住宅当たりの延べ面積についても、北陸の3県が上位を占めていることがわかります。
図表7:都道府県別持ち家率
(出典:総務省統計局HP 2010年データ)
図表8:1住宅当たり延べ面積
(出典:総務省統計局HP 2008年データ)
豊かな自然と潤いのある生活
雄大な立山連峰と美しい日本海に囲まれた北陸。景勝地は数えきれないほどです。
美味しい水に新鮮な魚介、稲作も盛んです。
図表9:北陸の景勝地
a) 世界遺産 相倉合掌作り集落
(写真:とやま観光ナビ)
b) 白米千米田
(写真:輪島市観光協会)
北陸と言うと、冬季の積雪が気になるかもしれませんが、実際には意外と少なく、積雪20cm未満の日がほとんどです(2003年~2012年 気象庁「気象統計情報」)。また、主要道路の除雪対策も万全。生活への影響はほとんどありません。
日本海を流れる対馬暖流の影響で、真冬でも3~4℃と意外と寒くありません。
図表10:冬期の平均気温
(出典:国立天文台編「理科年表2008」昭和46年~平成12年までの30年平均値)
更に、過去の統計を見ても、地震や台風などの災害が非常に少ない地域であることがわかります。
図表11:地域別台風接近数の平均
(出典:国立天文台編「理科年表2008」昭和46年~平成12年までの30年平均値)
北陸新幹線がもたらすもの
これまで、高速道路や鉄道網については、太平洋側を中心に整備が行われてきました。
しかしながら、頻発する地震などの災害発生時のリスク分散や、成長著しいアジアと共に発展し、国際競争力を更に高めていくために、日本海側の国土軸を確固たるものとし、安全安心な国土基盤に立脚した新たな成長戦略を描く必要があります。
北陸新幹線が大阪まで繋がることにより、太平洋側、日本海側両サイドからのネットワークが形成され、三大都市圏をはじめ、あらゆる方面から人の流れが創出されることになります。また、大規模災害発生時には、東海道新幹線との相互補完機能を発揮します。
図表12:北陸新幹線開通の影響
(出典:福井県HP)
最後に
北陸地方はライフサイエンス分野や高機能新素材分野など、イノベーション創出地域としての存在感が高まっています。また、幸福度調査で1位から3位を独占しているように、ワーク・ライフ・バランスの取れた豊かな生活が送れる地域です。このような魅力にあふれた北陸地方へのUターン、Iターンを、検討してみてはいかがでしょうか。